彼の突然変異が起こって最初に考えついた事は“何か”が彼の体に入り込んだのではないかという事でした。
この“何か”というのはなんらかの魂か家に宿っていた“気”か何なのかは未だに分かりませんが目に見えない領域の存在の仕業だと思いました。
なぜかというと、彼の突然変異が起こる一ヶ月ほど前に二人で一緒に住んでいた家から違う家に新しく引越して来たのですが、その家の雰囲気がなんとなく良い感じがしなかった事が大きな理由です。
内見の時に付近の家も何件か見学した後にその家を見たのですが、直感的に私は(ここは嫌やな)と思い彼にも「他の家がいい」と伝えたのですが、彼はその家がとても気に入ったらしく「俺は絶対ここがいい」と言いました。
当時の彼は私と彼で意見が分かれると私の意見を優先させてくれるような人だったので、そんな彼が自分の意見をここまで主張するなんてよっぽどの事だと思い、「そんなに気に入ったのなら」と彼の意見に従って(唯一窓から見える景色だけは私も気に入ったので)その家に引越す事に決まりましたが、この内見の時点で既に彼はその家の宿り主かなにかに魅入られていたのではないかと後になって思いました。
そして無事引越しが済んだのですが引越した初日になんとなく家の空気がざわついているように感じました。(どのようにざわついていたかを先程まで詳しく書いていたのですが、何もボタンを触っていないのに急にページが変わってそのくだりが全部消えてしまったので詳しく書くのはやめますw)
その後もその家で生活していてもなんとなく気分が落ち着かない日々が続きました。
当時彼が仕事から帰宅するのが夜24時頃だったのですがその時間まで一人で留守番するのが本当に憂鬱でした。
前に住んでいた家や他に暮らしていた家では感じた事のない空気でした。
そうこうしているうちに私の家がある場所一帯があまり良い土地ではないという事を知りました。
地元の人に私の家の場所を言うと「あそこに住んでるの?笑」みたいな事が4回ほどありました。
皆さん「あ、家ここなんだねー。。」「地元では有名だよ」「地元の人は絶対住まないよ」「親に暗くなったら近づいちゃだめって言われてた」というような事を口々に言っておられましたw
そんな矢先に私が14日間家を空け帰って来たら彼が豹変していて、私は自分が留守にしていたからだと思いました。
自分で言うのもなんですが、私は精神力が強い方だと思っているので何かが自分の中に入り込むような隙は無いと思っています。
彼のことも同じように思っていたのですが目の前の彼を見て、彼が何かに付け入られるような弱さを持っていた事にショックを受けました。
基本的に何かに乗っ取られるという事象は乗っ取られる本体に脆弱性がある事が原因だと思います。
それはパソコンでもアカウントでも人間でも同じです。
人間の場合、一概には言えませんが“自分が自分である”という強い認識が必要なのではないかと思います。
言い方を変えると“自分と繋がっている状態”だと思います。
巷でも最近よく“自分とコネクトする”や“本当の自分の魂と繋がる”というフレーズを見かけますが、これが出来ていないという事はセキュリティソフトがインストールされていないパソコンでありパスワードを設定していないIDと同等ということです。
(これだけで万全な対策とは言えませんが最低限の防御と言えると思います。)
自分と繋がっていないと自分自身を信頼出来ず、“心ここに在らず”になりやすく至って乗っ取られやすい状態と言えます。
私と彼の場合、もしかしたら私が一緒にいる事でファイアーウォール的な役割を果たしていたのが、留守にして彼から目を離した事によって結界が破られたような状態になっていたのかなと思いました。
そんな訳で私は彼が何者かに彼本体を乗っ取られたんだと思い、その目に見えない何かに対して敵意を憶えるようになりました。
夜寝ている時などふとした時にその何かの気配を感じた時は全力で「早く彼から出ていくように、誰もいないところから物音を出すな、迷惑なのでどこかに消えろ、甘えるな」というような念を送り付けていました。
私は幼少期から目に見えない何かを感じたり聞こえる事は稀にありましたが視えたり意思疎通が出来るタイプではありません。
これまでに何かを感じたり聞こえる事があってもその場限りの事ばかりで、こんなに長期にわたって目に見えない存在を感じる事も身近な人が乗っ取り被害に遭う経験も初めてで対処法などの知識は皆無でしたし、周りにこの話を相談出来る人もいなかったので、変わり果てた彼と目に見えない何かの存在感を前にして完全にキャパオーバーで軽くノイローゼになりそうでした。
唯一塩が効くらしいという知識だけはありましたが塩を盛ったらなんとなく負けた気がするので小道具は使いませんでしたw
そんなある日ふと、彼がまだ変わる前に占い喫茶に行った時の事を思い出しました。
そこは50代くらいの女性が切り盛りしていて、お店の飲食メニューを一品頼むと一緒に手相を観てくれるというシステムでした。
食べ物も食べれて手相も観て貰えるなんて一石二鳥やん!という事で過去にも一度観てもらった事があるのですが(第一回目の時の鑑定結果は今になってみると8割方当たっています。残り2割はこれから起こるかも知れないので未知数です)、第二回目に観てもらった時の事です。
その時は彼と付き合いだして数ヶ月が経った頃で完全に彼と結婚するつもりで、その占いおばさんに「今の彼が運命の人だと思ってるんです」と告げたところ、予想外の言葉が返って来ました。
「う〜ん、こんなん言いづらいけどね、彼は運命の人じゃないわねぇ。一年半先の二人の姿が視えないのよ。運命の人っていうのはそんなに簡単に決めるものじゃないよ。大丈夫、あなたにはちゃんと他に相手がいるから。背が高くてねぇハンサムよ、サーファーみたいな人。心配しなくても当たるから。最近また力が強くなって来ててねぇ、第三の目がよく視えるのよ〜、次からお金取ろうかと思ってるの、一回二千円くらいで。」
そういえば一回目の時は一品メニューの料金だけで鑑定してくれましたが二回目のこの時はメニュー料金+鑑定料金500円になっていて、まだ値上げするんかい、と思った事も思い出しました。
修行か何かした結果能力が強くなったらしく、もはや手相より私の背後を見ながら話していたのが印象的です。
三つ目の目で視られていたのでしょう。
ちなみに私の運命の相手を言い当てている部分のセリフは一言一句記憶しているのですが、実はこれと全く同じことを第一回目の鑑定の時に言われていたのです。
一回目の時はまた別の人とお付き合いをしていたのですが、その時には「今の彼も悪くないけどねぇ、あなたには他の人がいるわよ。今時っぽいサーファーみたいな人」と言っており、この“サーファーみたいな人”というフレーズを二回目に聞いた時に(前と同じ事言ってる!!)と一回目に言われた時の事がフラッシュバックしたのです。
一回目の鑑定の時は私のチャラついた見た目から適当にサーファーとか言うてるんやろなぁと思っていたのですが一回目からは二年ほど経っているし、占いおばさんがいちいち私を覚えているとも思えませんし、さすがに二回同じことを言われると当てずっぽうではないような気がしてきました。
そして、彼が運命の人じゃなくてサーファーと結婚するならどんな経緯で彼と別れることになるのか、自分にとって彼以上の人はいないはずだから、彼と結婚せずに他の人と一緒になるという事は彼がこの世からいなくなってしまうという事ではないか、と考えついてとても悲しくなりました。
彼がいなくならない限り彼と結婚しない理由が見当たらなかったのです。
それからというもの、彼と離れている時に連絡がつかない時などは(事故に遭ってはいないか)とやたら心配するようになりました。
幸いそのような出来事もなく過ごして来たのですが、突然変異した彼と過ごしているうちに以前の彼はもう戻ってこない、いなくなってしまったんだ、と気が付きました。
ずっと彼が何かの拍子に死んでしまうのではないかと不安だったのですが、今目の前にいるのは姿は彼でも中身は知らない人の様で、(ああ、私が知ってる彼はもう死んでしまったんやな)と思いました。
占いおばさんがこの事を指していたのかはわかりませんが、彼の突然変異が起こったのは逆算するとちょうどこの鑑定の日から一年五ヶ月後のことでした。
それまで突然変異した彼の事は何かの間違いだと思っていてなんとかして元の彼に戻そうとしていましたが、この占いおばさんの話を思い出した事によって突然変異が起こったという事実を受け入れて、変身後の彼という存在に向き合う方向に思考が変化していきました。
ちなみに今もまだ彼と一緒に当時と同じ家に住んでいてサーファーとは出逢っていませんw
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